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【伊 豆 を 走 る】


IZU

その2 修善寺~下田


期日:1992.9.15
距離:50キロ
走友:山根・高嶋・藤島




伊豆一周 の話にすっかり乗って来たのが走友会の走り屋上記3名、山道の辛さも知らずか車中はワイワイ、ガヤガヤ、駅弁でしっかり腹ごしらえをして8時30分修善寺駅着。 今にも泣き出しそうな空模様にも一同意気軒昂、着替えやら、ストレッチやら駅のお客さんの珍しそうな視線を浴びつつも準備完了。駅名を入れての証拠写真を撮り9時出発。
IZU 駅を出て直ぐ右折、真っ赤な修善寺橋に見送られて一路天城峠を目指して走り始める。  峠まで約12キロ、狩野川に沿った街道筋の古い佇まいの中を縦一列になって進む。 歩道が狭い。道はまだ登りを感じさせないが確実に高度を上げている。いくつかの小さな町並みに入るとお年寄りが三々五々と歩いているのに出会う。そうか!今日は敬老の日だ。 きっと祝賀会に行くのだろう。近いうちに自分もあの人たちの仲間になるのであろうが、今は元気に峠道を走っていることに感謝。

やがて 月ヶ瀬温泉着、自販機で水分補給、この付近から心配していた雨が降り出した。そろそろ登りがきつくなって来た。 一同無言、次第に強くなってきた雨の中をひたすら峠を目指す。湯ヶ島温泉通過、天気が良ければ沢山のハイカーや観光客で賑わう下田街道も今日は墨絵の中に埋もれて人影も全くない。川の様に流れてくる水の中を踝までうずめてひたすら登る。時折すれ違う観光バスのお客も突然現れたずぶ濡れのランナーに一瞬の驚きを残して走り去って行った。
浄連の滝、昭和の森、滑沢渓谷、・・・そして藤村文学碑、井上靖文学碑、川端康成文学碑、等々、天城街道は何故か人の心の激しさを静めてくれる日本文学の心の故郷の想いがする。激しい雨の中、縦一列の走りは山道故の緊張と恐怖を顔に滲ませて只黙々と峠を目指して行く。湯ヶ島を過ぎた辺りから国立公園の規制を受けてコンビニも自販機も側道から消えていた。早く登り切りたいと思うあまり、ここまで殆ど休みもなく走って来たが休める様な軒先もなかった。 漸く天城峠の頂上が見えてきた。国道414は新トンネルを経て河津に降りる。 我々は国道を離れて旧天城トンネルに入る。伊豆の 踊り子も辛く長い峠道を登り終えて額の汗を拭ったであろう細くて薄暗いトンネルに雨の無い一瞬を楽しんだ。 漸く全行程の1/3。ここまではひたすら登りばかり、この先は下るだけ。難所を越えたところで漸く一同に笑顔が戻った。

トンネル を越えたところにこの街道初めての食堂が雨の中に店を開いていた。迷うことなく何か補給を・・と飛び込む。突然のずぶ濡れで裸同然の男達の出現に店番のオバサンの驚いた顔が忘れられない。何はともあれ、雨に冷えた体をストーブにかざし、又濡れてしまうであろうT シャッツを取り換え、一息ついた頃熱い蕎麦が出来上がり一同漸く我に返った。
聞けば、このオバサンも横浜の人、この山の中に横浜人だけ・・・と言う奇遇。 この近くには民家は一軒もないと言う。小さな娘さんを育てていたが遊び友達が居るんだろうか。
漸く生気を取り戻した一同は優しいオバサンに見送られて再び雨の天城街道に飛び出した。
IZU


ここから 湯が野温泉まではひたすら下り。かなりの急勾配だ。と言うことは、ここまでの登りもこんな勾配だったのかと思った途端どっと疲れが出た。 登りはじっと俯いて足先だけを見ているので坂の勾配をあまり見ていないが、下りは足元から前方がしっかり見えるので高さを実感することになる。
今日は雨雲に覆われて下界が全く見えない。右下に河津川の瀬音を聞きながら晴れていれば数々の滝が見られる辺りを下りに任せて快調に走る。やがて珍しいループ橋が現れた。この山深い峠道に忽然と現れた人工のオブジェ、ずぶ濡れで記念写真を撮る。
やがて湯が野温泉の街並みが見えてきた。雨の中にひっそりと佇む温泉宿が如何にも伊豆らしい。「伊豆の踊子」の文学碑も雨に濡れて訪れる人もない。湯が野を過ぎた辺りで民家の軒下に入りしばしの雨宿り。道は414号から分岐して下田街道に入る。 鬱蒼たる杉木立の山道を再び峠を目指す。これまでの下りになれた足にはこの峠越えの 登りは苦しい。皆押し黙ってひたすら頂上を目指す。長い長い登りを終えた頃、漸く雨も小降りになり、これから下る沢合いの道を墨絵の様に浮かび上がらせていた。

IZU 残り18キロ、稲梓川に沿って一路下田を目指す。何時しか雨も止み、伊豆急稲梓駅、蓮台寺駅を経て道は漸く平坦になる。川の名前が稲梓川から稲生沢川に替って川幅が が広くなり、川岸の歩道がよく整備されて気持ちよく最後のランを楽しむ。この辺りは歴史が古いのであちこちに記念碑やその解説板が建てられており、走り疲れた脚を休めてしばし歴史の彼方に思いをおく。 午後3時 下田駅到着。

長い間 の念願だった天城の峠越えはこうして終わった。 汗と雨でずぶ濡れ、一刻も早く風呂に入ろうと探し回ったが地元の人は意外に銭湯を知らず、あちこち聞きまわって漸く見つけた温泉浴場。3時オープンの一番湯。処がそのお湯の熱いこと、とても首まで浸かる・・・とはいかず、それでも大仕事を終えた走り屋達の至福のひと時。
さっぱり汗を流して下田駅へ。途中の店先で今夜の酒の肴を買い込み、ついでに車中の分もしっかり確保してワンボックスに落ち着いた一同、まずは完走の乾杯! いつの間にか雨雲が晴れて秋の夕日を一杯に受けた初島に見送られて帰途に着いた。


IZU
1991.5.2    
横浜中央走友会 山本 卓


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