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【伊 豆 を 走 る】


IZU

その3 下田~伊東


期日:1994.9.15
距離:58キロ
走友:山根・高嶋・藤島




伊豆半島 全周完走を目指す走り屋が前回の天城峠越えに続き、下田から伊東58キロに 挑戦すべく朝9時下田駅に勢揃いした。天気は快晴、駅で道中のガイド資料を集め、片隅で着替えを済ませる。大の男が朝から裸で着替えているのを通行人が怪訝な目で見ている。今回のコースの前半部熱川までは先に単独走で走破済なので土地勘を生かして仲間を先導することになった。9時30分スタート。今回は仲間がいて、しかも早い時間のスタートなので気持ちはピクニック気分。

第1 の目標地 河津までの15キロ。 下田を出て間もなく須崎への道を右に分けて柿崎を通過、白浜海岸に飛び出す。海水浴客が去って漸く静けさを取り戻した白砂の海岸はプリンスホテルの白い壁と相まって 文字通りの白浜海岸である。距離約5キロ、しばしの休足で誰も居ない初秋の海に鋭気をもらう。プリンスホテルを過ぎるといよいよ登りが始まる。海岸の曲がりくねった道を縦一列で進む。歩道が無い処が多く路肩の僅かな幅が走路になり、肩すれすれに車が走り去る。皆黙々と高度を稼いでいる。先ほどまでの海岸が次第に低くなってきた。この辺で目の前に初島、大島、その向うに伊豆諸島の島々が手に取る様に見える。地球が丸いことを実感する景色である。
道は本根岬を越えて海を背に谷間の道を上流に向かって遡る。人家は全く見えないが何故か所々にバス停がある。見れば、バスは一日に一本か二本しかない。これでも無ければ困る人が居るのだろう。ここで故障したら 今日中には家に帰れないだろうな~と思った。知らず知らず皆早くこの山道を抜けだそうと黙々と走っている。この辺りは昔、伊豆三金山の一つと言われたな縄地金山のあったところで、品質の良さから特に慶長小判の地金に使われたといわれている。往時を偲ぶよすがもない山道が綴れ折に続く。谷の奥で対岸に渡りUターンして再び海へと向かう。中山のトンネルを抜けるとそこは目も眩むような断崖の上に出た。眼下にはリアス式の海岸が絶壁の白と松の緑に縁どられて息を呑むような絶景が広がっていた。 一同しばし足を止めてこの絶景に見入る。やがて、遥か下に河津の街並みが見えてきた。

IZU  天城峠から幾多の沢水を集め多くの滝を従えて流れ下って来た河津川を渡り、漸く 平らな道に降り立った。先に一人で同じ道を走ったのに、今日程の激しさを感じなかった様な気がする。河津川の川岸には早咲きで有名な河津桜の並木が天城の峠に向かって深く延びている。ここまで15キロ。先回はパイパスを知らずに給水も出来ぬまま走り続けたことを思い出し、今回はしっかり自販機を確保してしばし小憩。 久し振りの給水で乾いた喉を潤し、目の前の波打ち際で疲れた筋肉のクーリングをする。 振り返れば、目がくらむようだったあの絶壁が初秋の陽光を浴びて眩しく輝いていた。

再び 走り始める。この先は伊豆急の線路に沿って北上する。河津を出ると直ぐ今井浜の 綺麗な砂浜に出る。海水浴シーズンの喧騒さがウソみたいに初秋の穏やかな静けさの中にゆったりと波打っていた。 道は再び山に入り、見高の絶壁を越えて稲取温泉に入る。トンネルを避けて市内の迂回路から海辺の道を線路に沿って北上する。しかし、いつの間にか海岸線が遥か下に見えるほど登っている。大島が目の前に大きく見えて一同絶景に歓声を上げる。やがて、熱川温泉、3年前一人で漸く辿り着いた想い出の町。あの時、風呂とビールをご馳走になったお寿司屋が懐かしい。

IZU さあ ここからは未知の道である。道は断崖の上を一路伊東に向かう。北川港、大川港、赤沢港を遥か下に見て再び内陸に入る。 道路標識が伊東まで15キロを示している。ゴールは近い!  しかし、既に40キロを走って来た体にはこの15キロはなんと苦しい距離だろう。道は緩やかに、しかし確実に登りに入っている。伊豆高原駅を過ぎ、城ケ島海岸を過ぎてもまだ登りが続いている。車が俄然多くなった。みんな無口になって苦しみに耐えている。自販機での給水、八百屋でミカンの補給、太陽は既に西に傾き影が長くなった。
文字通り「伊豆高原」である。国道の混雑を避けて川奈口で旧道に入る。車から解放 されての安堵も束の間、道は小さな起伏の連続で疲れた体に最後の試練を下している。

久し振り に木陰の道を走る。思い返して今日初めての木陰である。海岸沿いの無機質な 風景に比べ、木陰は何と心を癒してくれることか。田代トンネルを越えて再び海岸に出るとそこには熱海、初島、大島が目の前に大きく飛び込んできた。今日は何度この景色を見ただろう。初めて伊東の標識が現れ思わず歓声が上がる。最後の力を振り絞って市内を目指すが道は依然としてローカル調。
IZU 再び出会った標識には、何んと伊東4キロとあるではないか。最初の標識で、もうゴールは目前・・・と思いこんでしまったのが苦しみの始まり。一同がっくり疲れて天を仰いだ。 そこからの4キロは永遠に終わらないのではないかと思うほど長かった。精魂尽き果てて漸く伊東駅にゴール! 皆、歓びの声を上げる元気もなくベンチに座り込んでしまった。伊豆半島58キロはまさに難行苦行の連続であった。伊豆半島に抱いていた優しさと柔らかさのイメージの影に、これほどの魔性を秘めていたのか。一同気を取り直して何はともあれ銭湯を探す。漸く見つけた銭湯、当然温泉。熱い温泉に首まで浸かって漸く笑顔が戻った。
〝凄いコースだったな~!“ 誰言うと無く聞こえてきた一言にこの日の難行が凝縮しているようだった。サッパリと汗を流した一同、当然ながら大量のビールを買い込んでさらなる難行の2次会?のために電車に乗りこんなだ頃、夕日が赤々と大島を染めていた。



IZU
1994.9      
横浜中央走友会 山本 卓


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