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【伊 豆 を 走 る】


IZU

その4 西伊豆を走る


  期日:2002.4.21~22
  距離:100キロ
  走友:高嶋威男・粂 正夫
     橋本玲子・寺澤靜子




伊豆半島一周 の残された西海岸ルート100kを走破しようと、地図を広げて思案にふける日々が続いた。このルートの頼りは一日数本のバスだけ。しかも東海岸と同様、断崖絶壁の間を縫う過酷なコース。
この難関に挑む我々に車でサポートを申し出てくれた寺沢さんを含め五名が4月21日朝9時雨上がりの修善寺駅に勢揃いした。粂さんは足の故障で走れずサポート隊に回ったのは残念。
駅前でこれから始まる山岳ランに備えて給食、ストレッチ、皆、緊張しながらの準備完了。駅名を入れての記念写真を撮り、さあ スタート。

駅裏 で狩野川の赤い橋を渡り僅かな登り勾配の天城街道を川に沿って遡る。この街道筋は歴史に彩られた数々の秘話を残すところ、狩野川の両岸に次々現れる古寺の佇まいが苦しい走りの中にも静かな安らぎを与えてくれる。やがて7k地点月ヶ瀬温泉郷に入り。ここでY字を右にとって、いよいよ西海岸への峠越えルートに入る。
IZU 古くからの生活道路として栄えた街道筋にその面影を残す家並みを左右に、道は次第に勾配を増して登り一筋に船原峠へと続く。
女性的な穏やかさで連なる伊豆の山並みには深山幽谷の様相はなく、視界が何時も開けているのが開放的で走るプレッシャーを和らげてくれる。何時しか人家も疎らになり、行きかう車もない山道に入る。サポート隊の給水が嬉しい。ひたすら登りの10k、ようやく標高800mの船原峠に着く。

 の茶店で少憩、はるか眼下に駿河湾が春の太陽を一杯に受けて輝いている。峠からは遥か彼方の土肥町を目指し旧道のジグザグ道を下る。標高差800mを6kmで下る勾配は強烈な衝撃となって筋肉を襲う。やがて土肥山川の細い流れを渡って峠道を下り終わった。ここからは海岸まで緩やかな下り。振り返れば今下ってきた峠道が恐ろしいほどの勾配で峠の彼方に消えていた。
下りで疲れきった足を労わるようにゆっくりとクーリングダウン。平坦の道がどれほど心地よいものなのか、この後 終日苦しめられる海岸線の強烈な山道に取り付いた一同の悲痛な面持ちの中に読み取れた。峠を下って土肥町、久しぶりの人里。ようやく人心地ついて街中を走る。給水、給食をしていよいよ海岸線のルート。町外れからいきなりの登り、海面が次第に低くなる。西海岸もほとんどが断崖絶壁。

小下田の台地に幾度かの登り下りを繰り返してやがて恋人岬。海に落ち込む断崖と海の青さと松の緑が見事なコントラスト。ここから沈む夕陽を眺める恋人たちは何を思うのだろうか。道は賀茂トンネルを抜けて宇久須の街並み、僅かな平坦部に砂浜が見える。海抜0メートル、しかしここから再び山岳ルート、小さなトンネルをいくつか越えてその先の黄金崎トンネル、出口の明かりが豆粒のような暗闇の歩道を一列縦隊で渡りきる。

IZU 景色 は抜群しかし既に30k以上走って来た身にはこの山岳ルートは悲鳴を上げたくなる辛さであった。トンネルを抜けた辺りで突然のガス欠! 土肥の町で補給して以来何も食べていないのに気付く。ほとんど夢遊病者! 橋本さんが気付いて懸命に先行するサポート車を追ってくれた。路肩に座り込んで待つこと暫く、ようやく寺沢車がバナナと水を持って引き返してくれた。自分の疲れを厭わず車を追ってくれた橋本さん、どんなに大変だっただろうか。 深謝。
小さなトンネルをいくつか越えて、はるか下に田子港を見送り、道は堂ヶ島に入る。断崖絶壁の奇勝にしばし疲れを癒す。その昔、社員旅行で奇岩天窓洞を船でくぐったことを思い出す。さあ、いよいよ今日の目的地 松崎が見えてきた。道はぐんぐんと高度を下げ、久しぶりに大きな町 松崎町にゴール。陽は既に西に傾き堂ヶ島の絶壁の陰に沈もうとしていた。総距離 約50km。

今日  の宿は高嶋さん手配の民宿あさか。 堂々たる体躯のご主人と、対照的にすんなりの奥さんの熱烈歓迎を受けて今日の長旅を終えた。早速、ヒノキ風呂の温泉に沈み長かった一日を振り返る。伊豆は山ばかりである。平坦なところを走った記憶が全く無い。厳しい走りだった。
さて、待望の夕食、新鮮な魚介類の数々、一同声を失うほどの豪華版。この先もこれほどの夕食には出会えないだろうと思うほど。奥さんの解説つきのサービスに一同大満足。心地よい疲れに温泉と美味い料理、走り切った満足感が全身に沁みわたる。


4月22日(日)
昨日 のガス欠を教訓に、豪華な朝食をしっかり食べて、早朝の出発。ご主人、奥さんに見送られて、まだ眠りから醒めていない静かな海辺の町を一路ゴールの下田を目指して走り出す。道は早くも絶壁の上を目指して 登りに取り付く。登りきって振り返ると松崎の町が小さく一つの視野の中に入って台地の高さを感じる。 ここからは、台地の道が絶壁に沿ってくねくねと 続く。約6k 雲見温泉、2,3年前南伊豆ハイキングで一泊した漁師の民宿を 思い出した。あの時の魚も美味かった。
雲見温泉からは次第に海岸を離れて山道に入る。台地から峠越えの登りが続く。波勝崎への分岐を右に見てやがて道は台地に別れを告げてマーガレットラインを妻良の町に下りる。ここからはゴールの下田まで内陸に入る。昨日の疲れも見せず穏やかな西伊豆のローカルロードを嬉々として走る。

橋本さんがイチゴハウスを見つけた。日曜日の午前まだイチゴ狩りの観光客が来ていないハウスの前で準備をしていたおばさんが大きなパックを差し入れしてくれた。美味かった~!

やがて 南伊豆町、二条川に沿って下賀茂温泉郷に入る。道路標識が下田への距離を15キロと示している。さあ もう一息、一同依然快調。小さな谷戸をやり過ごし、小さな登り下りを繰り返して増えだした車の間を縫ってゴールを目指す。日野、宇佐美を過ぎていよいよ下田の街に入った。橋本さんが会心の走りで下田駅前にトップのゴール。 全員会心の笑みでゴールを歓びあった。
ついに念願の伊豆半島一周を走り終えた。東海岸、西海岸、天城峠越え・・・総距離250キロ、延べ5日間。連日の50キロ、さしたる故障も無く、淡々と走り切った仲間たち、サポート隊の寺沢、粂さんに深謝。
ゴール後、蓮台寺温泉で汗を流し天城峠越えで帰途に着く。長かった100キロに想いを馳せながら、何時しか心地よい寝息をたてて・・・。

IZU


かねてから念願だった伊豆半島一周のマラニック、思いついてから延べ5日間で総延長250kを走破した。 伊豆は山ばかり、自分の足以外に頼れる移動手段が無いのは、ランナーにとって最高の条件、全てが自分の時間と空間。澄み切った空と海の青さ、穏やかに続く天城の山々、苦しい中に全ルート走破を成就した無上の達成感にランナーの冥利を噛みしめる伊豆紀行であった。


IZU
2002.4      
横浜中央走友会 山本 卓


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