TITLE

【伊 豆 を 走 る】


IZU

その5 伊豆大島を走る


   期日:2003.11.1~3
   距離:88キロ




1日目(2003.10.31)-11:30pm 東海汽船 カトレア丸に乗船-
長年の念願だった伊豆大島を走ることを実現するべく、船、宿の手配を早々と 済ませてこの連休を待った。
船は昔と違って予約時座席が指定されるので、朝までの数時間は隣から攻められることも無く安心して眠られたのは幸いだった。
幸い、海は穏やかでほとんど揺れを感じないまま早朝6時大島岡田港に着岸。 しかし、生憎の雨模様。下船した乗客たちは未だ寝静まってる港を後に三三五五散っていって気がついたら待合室は空っぽだった。
このまま走り出すには荷物が重いので、とりあえず今夜の宿に預けることにして元町を目指して小雨の中を歩く。距離約7km 8時 宿着。早朝なのに快く 迎えてくれて一先ず少憩。霧雨が降り続いているが気温が意外と高く、雨の冷たさが無いのはラッキー。 準備を整え、待望の大島一周を雨の中をスタート。

9:00am 元町から反時計回りに出発
   経由地: 元町~波浮港~筆島~大砂漠~大島公園~泉津~岡田港~元町
   総延長: 約45km


休日のせいか市内は人影が全く見えず店も開店の雰囲気さえないという都会人には理解しきれない長閑さの中を第一目標波浮町までの15km。道路は広く車は無く信号は無く・・・、うねるような起伏の道を海岸に沿って走る。霧雨に濡れた常緑樹のトンネルを抜けると、突然視界が開けて 伊豆諸島・展望台に出る。生憎 今日は雨雲が深く垂れ込めて視界ゼロ。晴れていれば点々と点在する伊豆七島が見えるはずなのに残念。
この7k地点、有名な地層切断面が見られる所。三原山の噴火の度に火山灰が幾層にも降り積もって大木の年輪をみているよう。地元の人はこれをバームクーヘンと呼んでいる。 この辺りから雨が本降りになったけど気温が高いのでむしろ快適。時折通る車も珍しいものを見た・・・という感じでスピードを緩めて通り過ぎていく。
やがて波浮の市内に近づく。道はバイパスで一周ラインにつながる。 波浮の港 の歌碑が見晴台にひっそり雨にぬれて、見下ろす港は霧雨の中に沈んでいる。人の気配も無くなって、いよいよ大砂漠に続く途方もない登りにかかる。
道端の店で最後の道を確認した。この山道を走って登る なんて無謀!とばかり、その険しさを本気で話してくれた。雲が切れて雨は上がりそう。地図の上では山らしい山はないはずなのに、見上げるような山のつらなり、遥か遠くの峠を目指して麓に取り付く。
右手遥か下に筆島が雨雲の中に浮かんで見える。道は次第に勾配を増し、 息が苦しくなった頃、幸運にも噴火の際の避難シェルターにたどり着いた。 此処でしっかり腹ごしらえを済ませ、隣のシェルターの若い二人連れとしばし 雑談、バイクで島一周の途中とか。この二人には翌日三原山の山頂で再会した。
いよいよ本格的な登りにかかる。10~15度の勾配が蛇行して果てしなく続く。 この距離約7km、これでもう登りは無い!と思うまでおよそ一時間。 これまでいろいろな坂道を登ったけど、この登りは三指に入るだろうと思われる厳しい峠越えであった。
IZU

山腹を開削して作った道なので谷側は明るく開け遥か下に波浮の港がかすんで見える。
さあ~、いよいよ大砂漠横断が始まる。ようやく雲が切れてその隙間から南国的な太陽が照りつけるようになった。道は等高線に沿って何処までも一直線、交差点も無く、車も無く、勿論信号も無く、常緑樹のトンネルの下の快適なランが続く。所々に広がる火山灰の堆積地帯を左右に見て、茫漠たる無機質な世界に没入してしまう。道は僅かに下り勾配、道幅一杯が全て我が物。これほど快適なロードはこの先もう会えないかもしれない。大砂漠の中間地点にポツンとバスの停留所がある。バスは一日3本、一体誰が何のために此処に降り立つのだろう。 快適なランは約15キロ続き、道は三原山への分岐点を 左に見て一路大島公園へと下る。

スタートから35k、ようやく人里に下りてきた。
連休なのに公園にはほとんど人影も無く、都会を離れた大島そのものが都内の片隅の公園なのかもしれない。 しばし休憩の後、出発地元町を目指して最後の10kに挑む。島内一周道路が完成して快適なランコースを午後の陽射しを一杯に浴びて楽しむ。 途中、今朝降り立った岡田港を眼下に急な登り下りを繰り返してやがて一直線の彼方に元町の市街地が見えてきた。まだ太陽が高いのでこの辺りからはゆっくり走りの観光ペース。ビルはないし、車は少ないし、歩行者は全然いないし、歩道は立派だし・・・。

長い間の念願だった大島一周ラン。地図では読みきれない大砂漠への登り、砂漠とは思えない椿のトンネル、心細くなるような人気のない一本道・・・。小さなリュックを背負って見知らぬ町をとぼとぼ走る楽しさを満喫した。宿に戻り、念願の露天風呂に直行。水着着用の混浴、期待していた対岸の伊豆半島の夜景も、その向こうに見えるはずの夕暮れの富士山も雨上がりの靄の中に埋もれて見えず残念。一日の汗を洗い流して涼み方々防波堤を散歩。今晩のおかずを釣りに来ていたおばさんのバケツはまだカラッポだった。胃に沁み込むビールと、とれたての魚ずくしの夕食に長かった一日を辿って幸せな一日を終わった。

2日目(2003.11.1)-三原山登山ラン-
朝から快晴、今日は待望の三原山登山ラン。 温泉の効果か昨日の疲れも全くなく、背負う荷物を最小限にして9時出発。 大島一周道路の途中から登山道に入る。朝から陽光が照り付けて11月とは 思えない暑さ。登り始めていきなりの急な登り、いろは坂並みのジグザグが 延々と続く。きつい! 聞けば、この坂は箱根駅伝の恰好の練習コースで多くの大学が年間を通して合宿に来ているとか。暑い! 木陰を探して懸命に登る。車もギアチェンジして猛然とアクセルを踏み込んでいる。綴れ折の遥か彼方にゴール地点の建物が見える。高度が上がるにつれ、眼下に元町の街並みがその範囲を少しずつ広げて横たわっている。車もなく、勿論人影もない無人の境を行く。突然、森林限界を超えて黒々とした熔岩地帯に躍り出た。 登り始めて2時間ようやく山頂の駐車場にゴール。 大勢の観光客で賑わっているが走って登ってきたのは流石にいないらしい。汗にまみれた姿は異様なものに見えただろう。
しばし休憩、水、エネルギーの補給を済ませ噴火口を見に行く。旧噴火口の中を走ること30分、その外輪に出来た新火口に到着。 火山灰と熔岩の世界はまさに月の世界を思わせる。 火口一周約1キロ、目のくらむような河口の中腹から幾筋もの水蒸気が噴出しておりまだ現役の活火山。 火口を一周する。火口から見る三原山はその裾野を火山灰に覆われた砂漠そのもの。緑は島周辺を僅かに取り巻くだけの静寂の世界。砂漠の中に設置された 火山観測小屋とそこに通ずる路が細くくねくねと続いており、僅かに人の世界へのつながりを教えてくれる。昨日、会心のランを楽しんだ椿のトンネルも頂上からは黒々とした濃緑色の帯の中に包み込まれていた。

IZU 大自然の巨大なエネルギーに圧倒されながら火口を一巡して一休み。 日当たりのいいベンチでエネルギーとアルコールを補給して下山開始。 帰りは緩やかなバス路線を下る。連休なのに登りも下りもほとんど車が来ない。秋の陽を一杯に受けてののんびりラン、至福の時。 距離約15k、椿の森に野生のリスが沢山走り回っている。天敵がいないせいか島中でリスの遊んでいる姿を見られるのは楽しい。
この辺りで気がついたこと、この島では柿やみかんなどの秋の果物が全く見られなかった。植生が亜熱帯性であるためか、単に見つけられなかっただけか。登山道はやがて島一周道路に出て、ここからは元町まで昨日走った道を走る。見覚えのある家並みに気持ちの余裕が出て恰好のクーリングダウン。午後4時無事宿到着。露天風呂に直行。真っ青な空と海を眺めながらの露天風呂は“日本人に生まれてよかったな・・!”

3日目(2003.11.2)-サンセット・パームライン-
11年前、長谷部、藤島君と大島30キロレースに参加した際、前日夕方の足慣らしランで見つけた絶好のコース、海岸沿いの丘陵でアンツーカーの舗装道路。棕櫚の並木が7キロ続く今回の大島ランの最大の目玉コース。しかし、天われに味方せず 3日目は又も雨。昨日の快晴は何処に行ったんだろう。
  IZU 幸い、気温はまだ高め、ぬれてしまえば汗と同じとばかり、9時意を決してスタート。観光客向けのサイクリングコースとあれば、シーズン中は大変な混みようと思われるが、時期外れのしかも雨の朝、誰一人会う人もない雨中のラン。 思いを巡らしていた待望のコースを文字通り独り占め。雨のランもまたよし。濃い霧の中墨絵のような風景、何処の港に向うのか小さなフエリーが現れては消えていく。所々の岩場にダイバーが取り付いている。天気がよければ水の中は素晴らしい世界だろうに 残念!。
小さな変化にとんだ海沿いのランコースも終点 野田浜 源為朝の古戦場。雨が凌げる小さな屋根の下でしばしの休憩。エネルギーの補給をして折り返し。大島飛行場の近くの町営牧場に立ち寄る、特製のソフトクリームは美味かった。売店のおばさんたちとしばし談笑、激励されて再び雨のコースに戻る。
11:00am 出発地点に戻る。寄り道をして走行距離約20km。 早速、露天風呂に飛び込む。雨のため先客は誰もいなくて広い浴槽を独り占め。

IZU
かねてからの念願だった大島ラン、この3日間島中くまなく走り切ったあれこれを思い出しながらの温泉はまさに至福の時。
午後3時出航の高速船、天候不順で急遽岡田港から出航に変更になり、急ぎ岡田港に向う。予定通り出航、一路熱海へ1時間の船旅。夕暮れの迫った熱海に着岸。静かだった大島の時間、久しぶりに心の洗われる3日間だった。


IZU
2002.4      
横浜中央走友会 山本 卓


BACK


HOME