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【本州横断】  新潟 ~ 東京 352Km 2006~2008年


ECHIGO

第4ステージ  荒川を渡って


期日:2008.6
走区:北鴻巣~東京
距離:55Km
走友:吉富秀子


06年9月新潟駅をスタートした 「本州横断・越後路を走る」 も、ついに最終ステージを迎えた。第1、第2ステージの長閑な越後平野と残雪の峠越えにロングランの魅力をたっぷり味わった旅を終えて、第3ステージからはいよいよ関東平野の街並みを走る緑に飢えたランとなった。 第4ステージはいよいよ県境の荒川を渡って東京に入る。

ECHIGO 今日の走友は第2ステージで三国峠越えに付き合ってくれた吉富さん。 最近、ロングランにすっかり自信と楽しみを覚えた心強い相棒、今日もいいランが出来そう。
横浜発6:29、湘南新宿ライン、北鴻巣着7:56快晴、初夏の日差しがまぶしい。日曜日の朝、駅前はまだ閑散としていて写真を撮ってもらうにも人探しが大変。 いつもの事ながら、今日一日にどんなドラマが待っているんだろう、スタート前のわくわく感がロングランの最高の魅力。 とは言え、やはりロングランは苦しい。なのに、なぜ又・・・。 「喉元過ぎれば熱さを忘れる」。 わがランニング中毒症もかなりの重症なのだろう。 この青空の下で自分の一番好きなことで一日過ごせるなら中毒症も悪くないな~。 今日のランを完走して念願の本州横断を完成させよう。吉富さんも体調は良さそうなので安心。またあの終盤の粘り強さで引っ張ってくれるそう。
第4ステージは国道17号をひたすら東京に向けて都会の街並みを走るランとしては あまり魅力のあるコースでは無いが、ここを走らなくては横断走が完成しない。 秋雨の降る新潟をスタートして4ステージ目、いよいよ最終ステージ。 

ECHIGO 準備を整えて 8:20am スタート。 国道17号に出る。東京に続くアスファルトの道が朝の逆光を受けて眩しく光っている。さあ、厳しい一日の始まり。歩道も程よく整備されてロングランには快適。 吉富さんも気持ちよさそう。第1の目標13k先の桶川を目指す。日差しが強くハンカチで後頭部を冷やしながらのランとなる。 単調な街並みが続くので現在地はJR駅への表示板が頼みとなり北本市を通過したことを知る。10キロ通過で体も動きが良くなり快調なランが続く。吉富さんのTシヤッツのオレンジ色が街並みのくすんだ色合いの中にひと際映えて久し振りのロングランを楽しんでいる。 やがて10時 桶川を通過。13キロを1時間40分、のんびりランの格好のペース。
この街道にはコンビニや自販機が少ないのは前回のランで確認していたので、常時、予備の水を背負っていなければならないのは街中のランらしくもなくつまらぬ苦労である。
次の目的地 大宮市まで12キロ、道は一直線、強い日差しを受けて単調な道を黙々と走る。山の向こうの緑の道が懐かしい。5キロほどで上尾市を通過。気温が高くなって水分補給の頻度が上がった。コンビニ、自販機の度に補充し、ビルの日陰で小休止。後頭部の日よけが長距離ランの証なのか車からは好奇な目が注がれる。流石にこの暑い中汗を流して走っているのは我々だけ。好奇な目も仕方ないか。それにしても、緑が見えないのはこれほど寂しいものなのだろうか。 無機質な都市の色は凡そ走るという人類が持って生まれた本能を満足させる要素を何処にも見出せない冷え冷えとした光景である。
ECHIGO やがて、道標に「東京32キロ」が現れた。初めて東京までの距離が示されて、この先まだ30キロ、恐怖にも似た緊張がはしる。この道がゴールに続いているなら行かねばならない。吉富さんも何を思いながら走っているのだろうか。疲れた様子もなく快調に走り続けている。
独りで走るときは対比するものがないので、自分の現状に妥協して、気がつくと疲れる筈もないようなスピードに落ちているのがこれまでの例。 でも、今日は元気者の対比がいるので、暑いながらも気持ちよく走っているのに気が付く。 やがて上尾運動公園の横を通り過ぎる。ここは、‘94 埼玉マラソンを走ったところ。前日の雪でコースが幅1,2mぐらいで大混乱、抜くも抜かれるもなく、長蛇の列がただ平行移動しているだけだった。懐かしいところ。

やがて、上越新幹線の下を潜って大宮に近くなった、スタートして25キロ。 突然、大宮公園の広大なバラ園が目に飛び込んできて、歓声をあげて公園に駈け下りた。久しぶりの緑と薔薇の原色。無味乾燥な都市砂漠を見慣れた目にはこの風景こそ文字通りのオアシス。広大な公園に色とりどりに咲き乱れているバラに25キロの疲れをどれほど癒されただろうか。この先がなければ芝生に転がって一日中空を見ていたい。吉富さんの疲れを忘れたようにほっとした笑顔が印象的だった。
ECHIGOさあ、まだゴールまで30キロ、先を急ごう。 バラ園で鋭気を取り戻して再び走りに戻る。 荒川まで12キロの標識、東京は遠い。
大宮周辺の急激な変貌、その昔、上越と東北への分岐点で大きな機関区の町のイメージだったが、今はその影さえも見えない近代的な大都市になっていた。大宮でちょうど12時。恰好なお蕎麦屋さんを見つけてようやく昼食。 汗で消えた塩分を蕎麦つゆで補給して体調バッチリ。 北海道では折角の天そばを一口も食べられなくて悔しい思いをしたのを思い出して今日の体調に感謝。 吉富さんもおなかが満たされて幸せそう。 一度座ってしまうと次の立ち上がりが辛い。 勇気をふるってカンカン照りの国道に出る。 さあ、行こう。 間もなくさいたま市、昔の浦和、こちらも大宮に負けずに高層ビルが立ち並ぶ近代的な大都市に変貌していた。
 「越後路を走る」と思い立ったこの旅も、300キロ走って流石にあの越後の緑の世界は消えて、相次ぐ高層ビルの下を走るのは、何処かで何かを忘れてきてしまったようで思考がかみ合わなくなった。

ECHIGO 東京が近くなったのか車の交通量が急に増えてきた。蕨市、戸田市を過ぎて 東京20キロ の標識。 ロングランを続けていると20キロの距離は、「ほんのお隣さん」 という感じになってしまうが、ここはまだ荒川の手前埼玉県である。 かって、勤務先が戸田市であったこともあり地名は懐かしいが、国道のイメージが浮かんでこない。見覚えのあるビルを探したがよく判らなかった。 新潟、群馬、埼玉と走破していよいよ最後の東京圏が近い。雨の越後路でスタート したこのランも今日快晴の空の下で終わろうとしている。 荒川に架かる笹目橋まであと2キロ の標識。遥けくも来しかな。
ECHIGO 突然前方が開けて荒川の河川敷の緑が目に飛び込んできた。笹目橋の標識が威厳をもって出迎えてくれた。スタートして39キロ地点。ようやく埼玉が終わった。 久しぶりの一面の緑。 荒川が先日の雨を集めて滔々と流れている。両岸の河川敷のグランドでボールを追いかける人たち、岸辺でのんびり釣り糸を垂れている人。汗を流して走り続けている二人。 それぞれの今日一日をおおらかに包み込むように流れる大河。
40キロの疲れも流してくれたのか吉富さんの笑顔が午後の日差しを受けて幸せそう。 走る速さに馴れた感覚には、川の流れが同じ波長で視覚がゆったり癒される思いがする。 この、のんびり感が何とも心地よく、これで今日のノルマ終わりならどんなにか幸せだろうと思ってしまう。
ECHIGOここまでの間、たくさんの川沿いを走り、それぞれの個性がその周りの風景に一番似合う借景となって数々の歓びを味わってきた。 川に沿って走ると一緒に旅をしているような思いになり、泡立つ早瀬は疲れた体に新鮮なエネルギーを吹き込んでくれた。今日の荒川はこの旅最後の川であり、笹目橋を渡ること即ち川との別れである。長かった旅の多くを付き合ってくれた川と別れるのは人並みの寂しさを感じてしまう。 橋の中央で彼方に流れ去る荒川に別れを告げて東京に入る。 624mを渡り終えて待望の東京の土を踏む。

さあ、あと15キロ。 陽が大分西に傾いてきた。板橋区に入る。とたんに人ごみが多くなり、のんびり走りがさらに遅くなり速さを感知する機会がなくなったのが怖い。 夕方の買い物客でにぎわう商店街を汗にまみれたランパン組が人をかき分けながら走るのは何ともご迷惑なことだった。
ECHIGO 17号線・中山道は都内に入り板橋の古い町並みを都心へと続いている。 首都高に沿って一路都心を目指すが、建物が密集する沿道はとても走りを楽しむ場ではなく、ようやく見つけた小さな公園に遊ぶ鴨の一家を眺めながら夕暮れが迫った都心への道を辿った。 鴨の一家も雛が猫にやられて半分になってしまった、と地元のお年寄りが嘆いていた。
やがて板橋区役所前、古い街並みと、近代的なビルが混在する典型的な下町の様相に人の住む世界のほのかな温かみを感じる。埼玉のあの無機質な街並みに比べ、雑踏に近い夕暮れの街はなんと人間臭いのだろう。走りを止めて人の流れに身を預け、当てもなくぶらぶら歩きがしたくなる、そんな道筋だった。板橋区の持つ下町的な風情の中にご多分にもれず高層ビルが混在して町の変わり方を暗示しているよう。
ECHIGO靖国通りの大きな交差点を渡りやがて巣鴨、地下鉄の標識が都心に戻った証でようやく安堵感を味わう。「日本橋10k」の標識。街中のランは残り10kを無情にも遥か彼方に押しやって長々と続く。 やがて走りつないできた中山道は白山で本郷通りと合流して東大農学部前に出た。休日のため、学生の姿も見えず静かな夕暮れだった。
ECHIGO 正門も赤門も閉じていたが何となく威厳を感じさせる佇まいであった。久しぶりに格好の被写体なので写真に収めて先を急ぐ。この付近からはかっての仕事場の近くなので土地勘もあり緊張感も緩む。本郷3丁目からお茶の水駅に出て中央線を渡ると後はゴールまで2キロ。 すっかり陽が沈んで夕闇が迫ったビル街を最後の走り。 人影のない歩道を長かった350キロを噛みしめるように走って 7:00pm 東京駅にゴール。

ECHIGO

‘06.9月 小雨の新潟をスタートし、稔りの越後平野、新緑の三国峠と利根川の急流。 季節の旬にあわせて会心の汗を流した前半戦、東京目指して都市砂漠の一本道をひたすら帰巣本能に任せて走り繋いだ関東平野。この長い旅の中にいつも誰かが側にいてくれた のは何物にも代えがたい嬉しさだった。 吉富さんとの2度のランはゴールがいつも真っ暗の中だったし、藤岡さんとの第3ステージは、ウルトラの足は疲れを知らず最後まで快調なランが楽しかった。 かくして、念願だった「日本縦断と日本横断」を完成し、残る「北海道横断」で我がランライフの主目標すべてを達成したい。

ECHIGO
横浜中央走友会 山本 卓


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